WCSはスイスとシングルエリミネーションの組み合わせで開催されます。
このうちスイスについて、詳細はあまり知られていません。

プレイヤーとして参加するだけなら、細かいルールを知る必要はありません。
対戦相手に勝つことを目指し、場合によって引き分けを狙うという基本は変わらないからです。
それでも、興味がある人に知ってもらいたいと思い記事を作ることにしました。

マイナーな資料ですが、現地のイベントオーガナイザー向けにスイスの運用方法が公開されています。
実のところ、必ずしも資料通りに大会が運営されているわけではありません※。
しかし、基本ルールを知っておく価値はあると思います。
※例えばWCSのDay1。規定のポイントを獲得することでDay2へ進出できますが、その方式について記載はありません。

この記事ではスイスを扱いますが、ラウンドの中身であるマッチについては扱いません。
Best of Three Matchesについて別の記事で解説していますので、そちらも参照してください。

●情報参照元
http://www.pokemon.com/us/play-pokemon/about/tournaments-rules-and-resources/
Tournament Operation Procedures
※2016年9月12日現在の資料に基づき執筆

●BO3についての解説
http://blog.livedoor.jp/ootsuki_mire/archives/52039076.html


●スイスの基本
参加者全員が同じ回数対戦できる大会形式です。
このとき、2回戦目からは成績が同じかなるべく近いプレイヤー同士で対戦します。

全勝者が1人になるまでラウンド(対戦)を続けるのが基本ですが、大会によってはラウンド数が決まっている場合があります。
すべてのラウンドが終了すると、対戦成績に応じて順位が付けられます。
最も重要な成績はマッチレコードです。
勝ち数、負け数、引き分け数を見て、勝ち数が多いプレイヤーが上位、同じなら負け数が少ない(引き分け数が多い)プレイヤーが上位になります。

マッチレコードはポイント(勝ち点)にも換算されます。
勝ち1回につき3ポイント、負け1回につき0ポイント、引き分け1回につき1ポイントが付与されます。
例えば、3勝1敗1引き分けなら10ポイントになります。
マッチレコードに比べて見るべき数字が少ないので、より素早くに成績を確認できます。


●マッチング
マッチングは成績が同じプレイヤー同士が対戦するように組まれます。
1回戦目は全員がマッチレコード0勝0敗なので、完全ランダムに組合わせを決定します。

2回戦目からは、マッチレコードが同じプレイヤーをグループにして、その中でランダムに組合せを決定します。
グループが奇数になる場合、1人を1つ下位のマッチレコードのグループに混ぜて組合せを行います。
最下位のグループが奇数の場合、1人がBye(不戦勝)になります。
このとき、マッチレコードが上位のグループから降りてきたプレイヤーはByeに選ばれません。

マッチングにおいては、後述するOMWPなどのタイブレイカーは使用されません。
また、大会によっては序盤の対戦がByeになる権利を持つ、シードのプレイヤー※がいる場合があります。
※WCSにはありません


●順位決定 (タイブレイカー)
すべてのラウンドが終了すると、成績に応じて順位を決定します。
順位は以下の優先順位で計算されます。
ある基準で同じ成績の場合、1つ下の方法で順位を決定します。

(1) マッチレコード
勝ち数が多いプレイヤーほど上位になります。
勝ち数が同じ場合は、負け数が少ない(引き分け数が多い)プレイヤーが上位になります。
ただし、引き分け3回は勝ち1回と同じ価値を持ちます。

ポイントが高い順、と言った方がわかりやすいと思います。

(2) 遅刻
大会に遅刻したプレイヤーは、そうでないプレイヤーよりも下位になります。

(3) オポネント・マッチ・ウィン・パーセンテージ (OMWP)
対戦相手全員の勝率を平均し、より高い方が順位が上になります。
より強い相手と対戦したプレイヤーの方が強い、という理屈です。

計算方法ですが、対戦相手個々人の勝率を算出して合計し、人数で割ります。
例1:スイス4ラウンド
対戦相手1 1勝3敗 → 25%
対戦相手2 2勝2敗 → 50%
対戦相手3 3勝1敗 → 75%
対戦相手4 4勝0敗 → 100%
(25% + 50% + 75% + 100%) ÷ 4 = 62.5%
OMWPは62.5%。

ただし、対戦相手の成績によっては修正が入る場合があります。
修正は2つのパターンがあります。
・勝率が25%に満たない場合
→ 25%として計算する
・ドロップしていた場合
→ 勝率が25%に満たない場合は、25%として計算する
→ 勝率が75%を超える場合は、75%として計算する
例2:スイス4ラウンド
対戦相手1 0勝4敗 → 25%
対戦相手2 2勝0敗(ドロップ) → 75%
対戦相手3 3勝1敗 → 75%
対戦相手4 2勝2敗 → 50%
(25% + 75% + 75% + 50%) ÷ 4 = 56.25%
OMWPは56.25%。

(4) オポネント・オポネント・マッチ・ウィン・パーセンテージ (OOMWP)
対戦相手全員のオポネントを平均し、より高い方が順位が上になります。

(5) 直接対戦結果
OOMWPまで同率のプレイヤーが2名で、直接対戦した場合は、そのラウンドの勝者が順位が上になります。

(6) 最終対戦相手の順位
直接対決がないなど、直接対戦結果でも順位が確定しない場合は、最後の対戦相手の順位が高い方が、順位が上になります。


●終わりに
以上、海外の公式資料によるスイスの詳細でした。
このうち「マッチングにOMWPを使用しない」「OMWPに修正項目がある」の2点は、あまり知られていないことだと思います。

国内大会のスイスドローでは、タイブレイカーがサイド差とオポネントに二分されます。
大型自主大会や、近年の公式大会ではオポネントが主流でしょうか。
それらの計算方法は公開されていませんから、この記事で紹介したものとは異なるかもしれません。
理念は同じでもやり方は色々ということで、あくまでも海外大会の話として参考にしてもらえればと思います。


余談
スイスでトップカットを行いシングルエリミネーションへ進むプレイヤーを決める場合、参加人数によってラウンド数を決定します。
一覧表がTournament Operation Proceduresに載っています。
興味がある方は、資料を参照してください。

コメント

りょうたぱぱ
2016年9月12日20:00

ちょうど自主大会用のスイスドローツールを改造していたところだったので参考になりました。ありがとうございます。

「勝率が25%に満たない場合は、25%として計算する」

これについて、MTGは33%でやっているようだったので様々なんだなと思いました。

みれ
2016年9月13日10:05

>りょうたぱぱさん
やはりこの記事を必要としている方はそういう用途ですよね。
私がここまで調べていたのも、似たような理由です。

ブイズカップで使うツールは、マッチング部分でオポネント計算していますか?

りょうたぱぱ
2016年9月20日11:50

コメント気づくのが遅くなりました。
前回のブイズカップで使ったツールはマッチング時点では考慮していませんでしたが、
今回はツールを改造してオポネントを計算に入れるようにしました。

みれ
2016年9月20日23:42

ありがとうございます。
ということは次のブイズカップでは途中の位置も重要なんですね。

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