第5週は少し一休み。対戦とは直接関係しない、あまり意識されない日米の違いを紹介します。
ポケモンカードとは日本人、そしてアメリカ人にとってどういう存在なのか?
日本語でするゲームと、英語でするゲームは何が違う?
そういった背景を知っていると、会場の風景が少し違って見えるかもしれません。

今回はこれまでよりも推測が多くなります。気に入らない部分もあると思いますが、話半分に聞いていただければ。

テーマ連載の概要については、予告の記事を確認してください。
http://blog.livedoor.jp/ootsuki_mire/archives/52037719.html


突然ですが、歴史の話をします。
TCGというゲームジャンルは、1993年にアメリカで発売されたマジック・ザ・ギャザリング(MTG)から始まりました。
それから3年後の1996年、ポケットモンスターカードゲームが日本で発売されました。初めての国産TCGでした。
TCGはテーブルトークRPG(TRPG)から派生したゲームで、MTGもTRPGのプレイヤー(大学生~)を対象としていました。(製作者が大学院生で、学生仲間で開発したそうです。)
一方でポケモンは発売前からコロコロコミックとタイアップしており、ターゲットは完全に小学生でした。
第一弾スターターの発売直前に雑誌にプロモカードが付くほどです。

経緯を見て分かるように、始まりはMTG=大人の趣味、ポケモン=子供の遊び、です。
私見ですが、これはそのまま両国のTCGへのイメージにつながっているように思います。
では、子供のアニメ※1であるポケモンのTCGの扱いはどうか?
子供向け、大人向け両方の側面を持っていますが、大会の場においては大人向けの側面が強く出ているようです。
※1アメリカでは、ゲーム発売前にアニメの放送が開始しました

このテーマ連載の中で、アメリカのルール体系は日本よりも細かく規定されていることが感じ取れたと思います。
それはアメリカがしっかりしているからという単純なことではなく、大人の競技として必要だったからではないでしょうか?
反対に日本では子供向けなので、難しくすれば敬遠されます。
また大会形式そのものも、時間や期間が長く、子供が親にねだって連れてってもらうようにはできていません。(大会形式は次回のテーマです)

実際、アメリカで開催されるLCQの参加人数はマスターリーグが最多で、ジュニアリーグはその数分の一、シニアはさらにその半分程度です。
アメリカ以外の規模が小さいナショナル大会では、ジュニアリーグの参加者が0人ということも、珍しくありません。

また、海外のポケモンカードは高価です。
日本では5枚150円ですが、アメリカでは10枚5ドルです。
今は1ドル=100円程度ですから、英語版は1.5倍以上の価格差があります。※2 ※3
さらにアジアなどでは輸入品扱いになるため、更に高くなります。
シンガポールの伊勢丹で見かけたときは、1パック=9シンガポールドルでした。当時の1シンガポールドルは、0.9米ドルほどです。
そのため、海外のプレイヤーは教育水準が高いお金持ちが多いです。
前回の追記で英語ができる人ばかりと書きましたが、そういう事情もあるのでしょう。
※2ちなみに、1箱36パック入りで180ドルです。
※3実際には量販店やネット経由で少し安く買うようです。ウォルマート(スーパー)では1パック4ドルです。



さて、またもや唐突に、語学の勉強をしましょう。
対戦前に言う「よろしくお願いします。」は、英語で何というでしょう?
正解は、該当なし、です。似た概念がないので、対戦開始時には「Good luck」です。
お互いの健闘を祈るとか、良いゲームにしましょう、といったところでしょうか。

当然ですが、ゲームのルールは言語化されて発表されます。
ということは、使う言語によって表現できる限界があるということです。
冒頭の問いかけはルールではありませんが、ルール上に翻訳困難な概念があれば、同じように言語によって意味が変わることがあり得ます。

XYになるまで問題だった「0枚サーチの扱い」も、同じ問題だったと考えています。
例えばですが、待ち合わせを全員がすっぽかしたとき、日本語では「誰も来なかった。」と言いませんか?
来ない、つまり否定文です。
英語では「Nobody came.」です。0人が来た。肯定文です。
どうでしょうか? 同じことを表すにも、だいぶ表現が違います。
日本語が来るか来ないか、来たなら何人か、を問題としたのに対して、英語では何人来たか、に0を含んでいます。
そもそも、日本語にゼロという概念が馴染みません。
「0」を英語で「ゼロ」と読むところにそれが表れています。日本語では「0=零=れい」です。

このような言語の特性によって、山札を0枚選ぶことへの心理的抵抗に日米で差があったとは考えられないでしょうか?※4
これはあくまでも仮説です。他にも「非公開情報だから」など理屈はつけられますし、海外でもトラッシュのカードを0枚選ぶことはできません。
※4MTGでも0枚選ぶことができるそうです。

ただし、今年のWCS2014ではこういった言語によるルール問題は特にありません。
有名なルール解釈の違いは「前のターンからいるメタモンがへんしんしても、そのターンは進化できない」「トラッシュに4枚プラズマエネルギーがあっても、アクロママシーンを使える」くらいです。
ですが、細かい部分で言語や文化による解釈の違いがあるかもしれません。

言語の問題は日本語英語間だけではなく、例えば英語フランス語間でも起こり得るはずです。
日本と韓国以外では、すべて英語を正とすることで解決しています。
WCSでも例外ではなく、日本語と英語で食い違いがあればすべて英語が優先されるので、注意してください。


散文でお送りしましたが、いかがだったでしょうか?
冒頭にも書いた通り、今回の内容はゲームに直接の影響を与えません。
ですが、せっかく日本以外の場所でゲームをするのなら、背景の違いも感じ取ってほしいと思っています。
あまり深く考える必要はありませんが、心の片隅にでもおいてもらえると嬉しいです。
次回は大会関係に戻って、大会の運営状況やスケジュールについてお話しします。


今回のテーマとは関係ありませんが、トムリンさんが良い記事を書いているので紹介します。
対戦に英語なんて必要ない、というお話。
http://tmy310sugar.diarynote.jp/201406262239191878/

コメント

トムリン
2014年7月3日21:48

昨年WCSに初参加したとき、TCGに対する認識の違いを肌で感じました。
例えば、親子連れより仲間同士の参加が多いこと、競技者へのリスペクトなど。
その理由が、今回のテーマで具体的に示されて納得がいきました。

話が逸れますが、言語=文化というのは重要ですね。
日本語は、「水」を示す言葉が、「ぬるま湯、熱湯、白湯、お冷や」など多くの種類があるのは文化に根付いているからだと考えています。ポケカにおいて、数に関する文化の違いが、解釈の違いになるのですね。

ちなみに上の記事は、英語に臆病になることはナイ!と勇気づけたい意味でした。まぁ、自分が苦手なので言い聞かせる部分がありますがw

キンゴ
2014年7月4日3:47

「無が来る」となると確かに日本語だと違和感ある表現ですね

みれ
2014年7月4日21:50

>トムリンさん
意見の賛同者がいらして安心しました。
今回、特に意見が分かれそうなところだったので。

言葉は文化、重要ですね。
人間は言葉を使って思考するので、考え方も母語に左右されるんですよね。たぶん、プレイングにも影響があるんだと思います。
記事では触れていませんが。

トムリンさんの記事で勇気づけられる人は多いと思いますよ。
やっぱり、実際にやってみるまでは不安ですからね。

>キンゴさん
言語ごとに色々な表現方法があって面白いですよね。
事実を記すだけならどの言語でもできるでしょうけど、ニュアンスを完璧に翻訳するのは無理だと思ってます。

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